浄化音楽

鳴り止む事のない、沢山の拍手が、今も耳に残る。
溶かされるようにして、醜くて汚い、私の心が洗われる。
必要のない、余計な物が、彼らの奏でる音色によって、取り除かれた。
無くす。
空っぽな私。
喪失感だけが、胸に残っている。
再生を遂げた?
私が目にした風景は、幻覚で、
私が耳にした音色は、幻聴だったかな。
圧巻の一言。
言葉を幾ら並べたって、何も伝えられやしない。
伝えきれやしない。
渋谷AXに、SIGUR ROSを見に行ってきた。
着いてすぐに、戸高くんを見かける。
見に来てるだろうなと、思ってたけど、本当にいましたよ。
シガー・ロス』という名を掲げた、美しく綺麗な世界へ、誘われる。
こんな私でも、その世界へ、連れていってくれるの?
心が震えた。
手や足も、ぶるぶる震えて、ずっと止まらなかった。
自分の身体が、まるで自分の物ではない感覚。
上の世界の者達に、操られているのでは?と、いう感覚。
私は、何処に連れていかれたのだろう?
無事、戻って来られたのかな?
トリップ。
静かにトリップ。
涙が、ただただ止まらなくて、、、
私の中で、全ての細胞が生まれ変わろうとしている。
私の中を、流れる血液がどくどくと音をたてて、蠢く。
激しく静かな流れ。
穏やかな高揚感。
非日常世界へ、導かれる美しい光。
天上世界へと続く、美しくて目映い程の光の筋。
目の前にアイスランドの天使を見た。
本当に、はっきりと、この目が、天使を捕らえた。
心は、より一層、透明に、より一層、乾いていく。
鳴り止まない。
頭の中で複雑且つ、繊細に共鳴し合う。
儚くて、壊れやすくて、ただ優しさに包み込まれた。
自分の頬を伝わる一筋の涙が、やけに生温くて、生きてる実感を持てた。
言葉を奪われた。涙だけが、許された。
ライブ終了後に、友人とご飯を食べる約束をしてたけど、
ごめんなさい。
今だけは、誰とも会いたくないよ、誰とも話したくないよ。
一人でいたいの。
そんな気分。
浮遊感を保ちつつ、そこら辺に、横たわって、溶けてしまいたい。
都会の月の下、
何度も、何度も、
溶けてしまいたい。
って、思ったな。